6月のミル
Nantes, Paris, Vence & Amsterdam, 2019

フランス共和国の首都にして国際観光都市、花の都として知られるパリですが、私はこれまでどちらかと言えば敬して遠ざけているところがありました。あまりにも眩しすぎて私には似合わないのではないかと勝手に思っていたのです。だけど実際に行ってみると、市井の当たり前の暮らしの中に美しさの満ちた素敵な街でした。
Day 1
1 June 2019
ナント
Nantes
エールフランスの夜便で早朝のシャルル・ド・ゴール空港に到着。そこから国内線に乗り継いでまずは西部の都市、ナントへ向かいます。
ナントの空港からバスで駅に移動し、Nannybagであらかじめ予約をしておいた、駅前のメルキ ュールホテルでスーツケースを預かって貰います。これはホテルやレストラン、商店などの空きスペースを利用した荷物預かりのマッチングサービス。フロントで「ハァ?」みたいな対応をされたらどうしようかとドキドキものでしたが、スマホで予約画面を見せるとあーハイハイという感じであっさり受け付けていただいて一安心でした。あと、私は心配性なので預け先がホテルのなのを確認してから予約しました。
ナントは光溢れる素敵な街でした。途中でお城を見たりしながらぶらぶら歩きます。
レ・マシン・ド・リル
Les Machines de L'ile
そしてたどり着いたのが「レ・マシン・ド・リル」。今から10年近く前、インターネットの動画サイトでたまたま見掛けたのがLittle Girl Giantと名付けられた、どこかの欧州の街角で一人の巨大な少女のマリオネットが歩いている映像でした。解像度の粗いその動画の中の少女は、しかし瞳や首のちょっとした動きの中に確かに魂が宿っていたのです。その後手がけたのがフランスのラ・マシンというグループであること、彼らの工房がナントにあることを知り、いつか必ず訪れようと心に誓っていたのでした。
かつての造船所を改造したという大きな工房と目玉である巨大な象さんが見えてきます。10時開場ということでそれに合わせて到着したのですが、チケット売場にはすでに長蛇の列ができていました。私はあらかじめインターネットで象さんの搭乗チケットを購入していたので、まずは象さんに乗り込みます。
木製の表皮を持つ巨大な象さんは50名ほどの観客を積み込むと、やがてゆっくりと歩き出します。地上で駆け寄る子供たちに鼻から水を浴びせたりしながら、初夏の日差しの中を歩くスチームパンクな象さんは非現実的で、みんな我知らず笑顔になります。制御のためのアクチュエーターや計器板もまた素敵。
象さんの搭乗が終わったあと、改めてチケットの列に並びます。改めて思えばこれが今回の旅でいちばん長時間列に並んだ体験でした。土曜日だったためか、家族連れがとても多かったです(曜日によって開場時間が異なりますので公式サイトで確認を)。みんなニコニコ。並んでいるうちに象さんがまた戻ってきて水を噴いてくれたり、チケット売場で「ジャポンから来たの?ありがとう!」って言って貰ったり。
工房では様々な展示を説明付きで見学することができます。横浜で見たことのある蜘蛛と再会したりして。
更に向かい側の棟では現在制作中の新しいプロジェクトの様子も見ることが出来ますが、こちらは撮影禁止。
レ・マシン・ド・リル、本当に楽しかったです。ナントはパリからTGVで2時間半、飛行機だと1時間ほど。ナントの街ももう一度訪れたいと思うような素敵な街(毎年開催される音楽イベント、ラ・フォル・ジュルネでも有名ですね)で、オススメです。
パリ
Paris
ドイツ福音主義教会
Eglise protestante Allemande
まる一日ラ・マシンを堪能した後はナントから夕方のTGVに乗ってパリに戻ります。ホテルにチェックイン、シャワーを浴びて着替えた後、ブランシュ通りにあるドイツ福音主義教会へ向かいます。こちらでMikrokosmosのコンサートがあるのです。
今回の旅に少し先立つ5月の連休の時に、有楽町国際フォーラムで開催されたラ・フォル・ジュルネ・ジャポンでたまたま聴いたのがこのコーラスグループ、Mikrokosmosでした。静謐で異教的ですらあるその合唱は、これまで私が出逢ったことのないもので深い衝撃を受けたのです。そして彼らのwebサイトを見たところちょうどパリ滞在中にコンサートがあることを発見して、メールで連絡を取って予約したのでした。
教会の中は幅広い年齢層の観衆で満員御礼。プロテスタント教会の禁欲的な内装と、パリの空の下聴くMikrokosmosの芳醇な 響きはなんとも絶妙な取り合わせでした。
到着初日の夜の公演ということで時差ボケが心配でしたが、昼間太陽をたっぷり浴びたおかげで何とか持ちこたえました。
それにしてもヨーロッパの夏は日が長い!(これまで欧州にやって来たのは冬や秋だったので実感がなかったのです)コンサートが終わった夜10時過ぎですが、まだ空はこんな感じでした。
Day 2
2 June 2019
Fauchon L'hotel
Fauchon L'hotel
さて夜が明けて本格的に旅のはじまりです(とは言え、今回は初日にかなりガッツリ動いていましたが)。
パリで宿泊したのは日本でもお馴染みのフォションが2018年にオープンしたフォション・ロテルです。マドレーヌ広場のすぐ傍という交通至便な場所に位置し(なんでもかつての本社の所在地なのだそうです。現在の本店もすぐ近くです)、結局滞在中はほとんど徒歩で過ごすことができました。フォションピンクを効果的に配したデザインは洗練されていて、特筆すべきは室内にミニバーならぬフードバーがあってフォションのお菓子が食べられるということ :-D
スタッフの対応もチャーミングで素晴らしく、滞在中は何不自由なく過ごすことができました。
ルーブル美術館
Musée du Louvre
まず最初はルーブル美術館へ。
あらかじめミュージアムパスを購入していたのでパッサージュ・リシュリュー側の入り口から入場(最後の写真ですね)。思っていたよりもスムーズに入場できました。この日はオルセー美術館の無料開館日だったせいもあるのかな。
ミロのヴィーナスとモナリザはアホほど混んでいましたが(モナリザはほとんど「モナリザを見に来る人を観に来た」状態でしたがしょうがない)、それ以外はツアー客がやってこないのかゆったりと観賞することができました。とりわけフランドル絵画の展示は場所が奥まっていることもあってか、フェルメールも貸し切り状態で堪能することができました。
古代エジプトから時代をたどるように観覧する中で、自分の中で中世絵画への印象が少し変わったりもしました。確かに様式化はされていますが、敬虔さやまた様式の中から逆に立ち上る純粋さはあるのだと感じたり。それとこれだけ宗教画を一挙に観ると、「空を飛ぶ」ことが宗教性と深く結びついたことも皮膚感覚として理解できたりもして。
他にはガラスのピラミッドの下の彫刻の展示も充実していて素敵でした。
この日は昼間の予定を他に入れていなかったのは正解で、まる一日すっかりルーブルの中にこもっていました。遅めの昼食を内部にあるフードコートで。味はよかったですが改めて写真を見ると、うーんこれが20ユーロのハンバーガーか……。
クレージー・ホース
Crazy Horse
写真はありません :-P
もうオトナなので夜は名にし負うキャバレー、クレージー・ホースのショーを観ました。
たまたまこの日はラトビア出身の義足のポップスター、ヴィクトリア・モデスタ(Viktoria Modesta)さんとのコラボレーションによるスペシャルプログラム。なぜか最前列かぶりつきに案内して貰ったこともあって、ただひたすらに美しかったです。うっとり。
そうそう、女性ダンサーだけというわけではなく、二人の紳士によるジャグリングの演目もあったのですがこれもすごい技術と古き良き時代のキャバレーショーへのリスペクトに満ちたプレゼンテーションで素敵なものでした。
Day 3
3 June 2019
オランジュリー美術館
Musée de l'Orangerie
この日はフォンテンブロー宮殿に行こうかとも思ったのですが、今回の旅は美術館巡りに決めました。そこでオランジュリー美術館に向かいます。
ここは楕円形のふたつの展示室に収蔵されているモネの『水蓮』が最も有名。(晴天とは行かなかったのですが)天窓から降り注ぐ柔らかい陽光の中の水蓮は美しいものでした。
水蓮以外にも印象派の作品が展示されていて見応えのあるものでした。
翌日のオルセー美術館でも出会いましたが、学校の授業で美術館にやって来て本物と出逢う機会があるのは素晴らしいなあ。
Champeaux
Champeaux Restaurant
お昼はレ・アルにあるシャンポー(Champeaux)でいただきます。こちらはアラン・デュカスのプロデュースによって2016年にオープンしたブラッセリー。古典的なビストロ料理を現代的に提供するというのがコンセプト。ちょうど到着したのが12時の開店直後だったので予約無しでも席に着くことができましたが、1時を過ぎる頃には広い店内が満席の賑わいとなっていました。
曜日代わりのメインで3皿のランチは34ユーロでお得感があります。周囲のテーブルを眺めると名物のスフレを食べている人も多かったです。
ジャックマール・アンドレ美術館
Museé JacqueMart-André
お昼を食べた後はプランタンの食品売場でいろいろ購入した後ジャックマール・アンドレ美術館へ。ここは19世紀の邸宅を利用した私立美術館。収蔵品だけではなく建物そのものも素敵です。
常設展もよかったのですが、デンマークの画家、ハマースホイのの特別展が衝撃的でした。19世紀末から20世紀初頭の作品とは思えないほどに現代的で、今回観た絵画の中でいちばん印象深かったと言ってよいほど。